住宅リフォームで悩みを抱える人は後を絶たないです。
工事の優先順位を誤って多額の費用が無駄になるといった事態が目立ちます。
限られた予算を効率よく使い、快適な環境を保つにはどうすればいいのか。実際に「失敗した」と感じた体験談や典型例から、注意すべきポイントを探りました。
「母は介護リフォームに熱心だったが、結果から見れば失敗だった」。東京都内のマンションの一室を亡くなった母から相続した40代の会社員男性はため息をつきます。10年ほど前、母は在宅介護に備え、手すり設置など内装リフォームに100万円近くを投じました。
ただ直後に体調を崩して介護施設へ入所。自宅に一度も戻らず、亡くなりました。
せっかく設置した手すりは使う機会がほぼなかった一方、工事後に部屋の一部で水漏れによるとみられるカビなどが目立ち始めました。
「再び補修しないと、自分が住むことも、売却して手放すことも難しそうだ。母が10年前の資金を水漏れ対策工事などへ回していればとつい考えてしまう」
不動産コンサルティングのさくら事務所(東京・渋谷)の田村啓氏は「高齢世代のリフォームの典型的失敗は過剰な介護関連工事だ」と指摘します。
まだ体調の良い60代ごろに将来を見据えてリフォームを考える人が多いが、どんな介護が必要になるかは人それぞれ。最適な工事はどれか事前に予測するのは難しい。
例えば手すりは体の左右どちらに不具合が生じるかなどによって、取り付けるべき位置が異なるといいます。
建物の構造にまで手を入れ、車椅子が通れるように通路を広げるといった大きな工事になると1000万円以上の出費もありえます。
「工事直後、介護施設へ移ることになる場合もある。基本的に1回で大がかりな工事をするよりは体調を見ながら『都度対応』する方が効率的だ」(田村氏)
比較的若い世代が陥りやすい失敗もあります。神奈川県内で築30年超の戸建て住宅を中古で購入した自営業の40代女性は「リフォーム費用が予算の2倍に膨らんだ」と肩を落とします。
仕事場としても使えるように約500万円を投じて内部を大きく改装したが、わずか数カ月で雨漏りが発生。原因は屋根などの劣化でした。結局、防水補修と内装の一部をやり直し、さらに約500万円かかりました。
「リフォームは『外壁や屋根が先、内装は後』が鉄則」。リフォームに詳しい彩ホームプランニング(神奈川県大和市)の豊田憲明代表は強調します。
特に築30年以上経過した住宅で外側の補修を先送りして内装リフォームをすると、その後の雨漏りなどでせっかく手を付けた内装まで台無しになるケースが多いです。
最近では価格が高い新築住宅を避け、中古住宅を買って好みに合うように改装する若い世代も出てきています。
しかし内装優先で工事した結果、後になって困る例をよく見るといいます。
事業者選びも重要です。
さくら事務所の田村氏は「複数の事業者に工事内容の提案をしてもらって比べたい」と助言しています。
近年ではインターネットなどの活用で比較的簡単に複数の事業者を探せますが、単純な相見積もりでは各事業者の技術や経験はわからない場合があります。住宅の現状を検査してもらったうえで、最優先の工事は何か、費用を抑える方法があるかといった視点から、複数のプランを見比べる方が事業者を評価しやすいといいます。